舌がん


舌がんの症状と診断:

 舌がんは舌の縁に最も多く発生します。舌がんの最初の様相は、実にさまざまです。たとえば、表面に白い厚皮がはったようになったり、表面の皮がこすれたように赤くなったり、あるいは隆起したり、小さなしこりであったりするなど、多種多様の外見を示します。

 痛みは人によってあったり、無かったりで、悪性かどうかを判断する決め手にはなりません。舌や歯肉などにしこりがあったり、治りにくい潰瘍があったり、また、剥がれにくい白い膜があったりする場合には早めに診察をうけることをお勧めします。
 舌や頬の粘膜の白斑は”白板症”といわれ、一部のものはがんであったり、がんになる前段階のものであったりするので、細胞をとって調べる必要があります。
 しこりに痛みが無かったため放置していた、という方が時々見受けられますが、放置していて進行させてしまうことは、治療を難しくする最大の要因ですので、そのようなことがないよう注意しましょう。
 われわれ専門医は、このような病変を見たとき、表面を拡大して見たり触診したりして、悪性かどうかを判断し、疑わしければさらにその部分の生検(せいけん)を行います。これは、患部からごく小さい組織を取って顕微鏡で調べるという検査のことで、病気の善し悪しは、この検査により確定します。

舌がんの治療: 

 舌がんは、大きさ、進展の具合などから1期から4期までの4段階に分けられます。

 1期、2期の比較的早期の舌がんの多くは、放射線治療や小範囲の切除のいづれかで治ります。

 しかし、それ以上のもっと進行した舌がんでは、放射線では消失せず、さらに手術を行わねばなりません。手術を行う場合、術後の機能障害の程度は舌の切除の範囲によっていろいろです。 

 不幸にして舌の半分を失わねばならないようなケースでも、現在私共は、欠損部を他の筋肉や皮膚で補充する、いわゆる再建手術を同時に行いますので、術後の機能障害を最小限にとどめることができます。すなわち、このような患者さんでも、実生活では、何とか会話によって意思を伝えることができ、また食事もほとんど正常にとることができることでしょう。

 舌がんの困った特徴ひとつは、リンパ節への転移がかなり多いことです。晩発性転移といわれるものは、治療開始時にリンパ節転移がなくとも、治療終了後に約3割ほどの出現があります。転移の頻度は、がんの大きさが増すほど高くなります。転移したリンパ節は硬くふれ、ほとんどが顎下部、頚部などに出現します。転移したリンパ節は、周囲のリンパ節を含めて一塊として取り去る必要があります。この手術は、頸部かく清術とよばれます。